長い間　温めたことば

　言うかどうか　迷い
    　心の中で　　
　煮詰めに　煮詰めた
    　ことば
　あなたに　ささげる
　ことば　の　ひとひら
　　　届けたいのは
　　　　こころの
　　　　ぬくもり
　　　　　　＊
　言うかどうか　迷い
　　　　心の中で
　煮詰めに　煮詰めた
　　　　ことば
　あなたの　こころの
　　おく深く届けたい
　　　生きている
　　　よろこび


ことばのごちそう

　ことば　は　ごちそう　
　　とびきりおいしい
　　　いちごあじ

　ことばは　ごちそう
　　じゅくしてかぐわしい
　　　メロンあじ


ことばの香水

　きみのくちびるから
　　もれることばの
　かぐわしさは　なにに
　　たとえよう

　　そうだね　
　天然の果実の香り
　

ことば　は　素粒子？

　言葉って　何だと思う？
　素粒子　みたいに　目には
　見えないけど　一定の振動が　
　贈る側から　贈られる側に
　　　伝わる　だから
　　受け取った人の心に
　　伝わった振動が
　あたらしい言葉を　生んで
　　こんどは
　　送り返され
　　心を　揺すぶる


言葉の宝石

　長い年月　強い圧力にたえ
　　　それこそ
　日の目をみることのない
　　狭い土中で
　押さえ付けられたまま
　苦しい長い時間を
　一言の愚痴めいた言葉を
　　発するもことなく　
　　　ただ一筋の
　　希望をいだいて
　　　耐え抜いた
　　だからこそ
　彼の一言が　宝石のように
　　貴重なのだ

言葉のお届物

　どうぞ　お収めください
　　　私の想い
　　この箱の中に
　　詰まっています
　と差し出す　のん気平兵衛の
　　大好きな　言葉のたば
　　　淡い　　　　　恋心　
　　　優雅な　　　　香り
　　 デリシャスな　味わい
　　 快適な　　　　空調
　　　ソフトな　　　言葉遣い
　　　滑らかな　　　感触
　　 ハイレベルな　テクニック
　　 見果てぬ　　　夢


言葉の贈り物

　おつかれさま
　　いいかんじですね

　すばらしかったですよ
　　どういたしまして

　だれでも　そう思います
　　よろこんで　させて
　　　いただきます

　それは　あなたが　
　　ごりっぱだからです

　なにをおっしゃいます
　　ごけんそんを
　　　　　＊
　日頃の　何げない一言だけど
　気持ちが つたわれば　それは
　　立派な　言葉の贈り物

○　このミニ詩集「言葉の贈り物」に収めた詩は６０代になって以降の作で、言葉に対する作者の態度が、初期の頃とは大きく変わってきているのが分かります。