広がり
表紙の写真は、六本木の国立新美術館で開かれた三軌展に出展の小森秀司画伯の油絵作品を筆者が撮ったものです。
プロローグ(抄)
この世の中で人間一人が生きていくのは
簡単ではない で、あっても
せっかく生まれた人生だ、一生懸命生きよう
人生を投げ出すなんて、罪悪だ
それが、人生の最大のピンチに直面した時に、手にした覚悟だった。
2020年版のはしがき
本編の中で、登場人物の一人大木勇也の作品として登場する短編小説『裸の桜』は、私がサラリーマン生活の中で、二十代の終わりに書いたものです。それから五十年の歳月が流れ、いまここにやっと、『裸の桜』の全編を完成させることができました。
短編小説が水彩だとすれば、長編小説となった『裸の桜』は、油絵にたとえることができるでしょう。何度も挫折し、何度も塗り直し、やっと仕上がりの感慨をもてるところまできたというのが、今の心境です。
この世に一冊だけでも、手製の本として残したいという気持ちになったとき、小森秀司画伯の油絵作品と出会ったのでした。
画伯はサラリーマン時代の職場の10歳ぐらい先輩で、同じようにサラリーマンの傍ら画業に取り組んでこられたのですが、「生きる」と題された作品で描き表された一本の桜の大樹の、「主幹を切られた姿で、花を咲かせている」たくましい絵柄に、この小説の登場人物の幾人かの女性たちの生きざまに相通じるものを感じ、縦長の文庫本サイズに修正させてもらったうえで、本の表紙にさせていただきました。
2016年版のはしがき
表紙の図柄をどうするかが課題となりました。混迷の後、取手市民ギャラリーに展示されていた老人ホームのはり絵作品と出会ったのでした。フォーカスした写真に現れた、はり絵独時の桜の木の質感が、この小説にふさわしい気がして、表紙に使わしてもらうことにしたものです
○ トピック
2つの端書を並べたのにはわけがあります。実は、この小説を2016年に本にするときも、小森さんの絵の写真を使って表紙にしてみたかったのです。小説の内容が、戦後駐留軍のアメリカ兵と日本人女性の間にできた金髪のストリッパーの桜という名の女性と、若気の過ちから子供の産めない体になった大阪生まれの女性記者の不屈の人生話なので、小森さんの「いのち」と題した絵がぴったりだと感じ、一度はお願いの手紙を書こうと思ったのですが、その当時はあまり接点がなくあきらめ、どうしようかなと思っているときにたまたまJR取手駅東西通路の市民ギャラリー展示の作品に出会い表紙を飾った経緯があったのです。
本来この小説には、主人公の女性記者兼小説家と伝説のストリッパー桜が一緒にアメリカへ行き、桜の父親の元米兵を探すというあらすじを念頭に続編を書く気持ちが残っていて、なかなかハードルが高い感じで行き詰ってしまっていたのです。今回、HPを作るにあたって、小説の末尾に主人公がその先の意欲を持つ場面を追加することで折り合いをつけ、小森さんの絵とのコラボを実現させたいと「裸の桜2020」として再発行することを小森さんにお願いし、念願がかない実現できたものです。